2011年3月23日水曜日

わたしを離さないで










































Flickr(218,219)アップしました。

特別、朝が早いとか、ラッシュにぶちあたるとかで
なければ、電車に長く乗っているのが
けっこう好きです。(できれば、乗り換え少なめで。)
理由は簡単で、本が読めるから。
1時間以上かかるとこならば、往復で2時間。
ちょっとした、中編ぐらいの小説など読めてしまうのもよい。
相性のいい本とばかりとはいかないので、
これ、惰性だなという感じで、とりあえず、最後まで読もうと
いうのもあれば、乗り過ごしてしまうほど入り込んでしまって、
本当に乗り過ごしてしまったりするときもあります。
そして、久しぶりに本当に乗り過ごしてしまった本が
カズオ・イシグロの小説、"わたしを離さないで”。
カズオ・イシグロは日本生まれのイギリス育ちの、
イギリス人。(けど、純日本の血筋です。)
日本では、知る人ぞ知る、というほど、無名ではないけれど、
誰もが知るというほど有名な作家ではないかもしれません。
彼の多くの他の小説同様、
主人公に静かに淡々と、独白のように語らせているという
スタイルをとっています。
うまく説明できそうもないので、
解説をしている柴田元幸さんの
言葉を引用させていただくと、

「細部まで抑制が利いた」「入念に構成された」
といった賛辞が小説について口にされるとき、
その賛辞はどこか醒めた感じに聞こえてしまうことが少なくない。
むろん好みは人それぞれだが、
我々の多くは、
書き手があたかも抑制などいっさいかなぐり捨てたかのような、
我を忘れて書いたように思える作品に
仰天させられることを求めているのではないだろうか。
日本生まれのイギリス人作家カズオ・イシグロの
第六長編にあたる本書『わたしを離さないで』は、
細部まで抑制が利いていて、入念に構成されていて、
かつ我々を仰天させてくれる、きわめて希有な小説である。

その通り!というしかない見事な解説ですが、
彼の他の小説との違いは、(といっても全て読んだわけではないのですが。)
いままでは、主人公がいろいろと物語を語っていくわけですが、
実際、そこでいったい何が起ったということについて、非常に曖昧だったり、
主人公に語らせるということによって、
本当に起ったことと、違うのでは、(勘違いだったり、思い込みだったり。)
というような事を描いていたりして、(それはそれで、大変面白いのですが。)
この、”わたしを離さないで”も基本的には、同じような感じで
進んでいくのですが、ちゃんと、謎解きというか、
一体どういうことなのか、ということを明かしていて、
そして、それは、たしかにショッキングな出来事だったりする。
とはいえ、そういうものを抜きにしても、
とりあえず、最後まで読まずにはいられなくなり、
そして、とてもよい終わり方で、
読んでよかったなあと心から思える作品でした。

そして、全くの偶然だったのですが、
なんと、3月26日から、”わたしを離さないで”の映画がはじまるようです。
(映画化されてることも知らなかった。)







映画『わたしを離さないで』予告編
わたしを離さないで - "Never Let Me Go" (Judy Bridgewater)
カズオ・イシグロインタビュー

トレイラーを見た感じだと、
原作より、ラブストーリーを重視しているような感じですが、
(まあ、そりゃーそうでしょう。)
どちらにせよ、なんというか、たぶん、
泣いてしまうような感じもするので、
一人で観に行こうと思います。

ではでは、また。

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